一筆法話71

『問伊』(かれにとわん)



 髪を金色に染めている人を岐阜の片田舎の美濃市でもよく見かけるようにな
った。笑い話に、

「最近は臓器移植が盛んで、医学的に脳移植が可能になってきた。ハーバード
大学出身や東大生の脳みそは一〇万円位で売れるらしい。しかし、茶髪の子の
脳みそは最低でも八〇〇万円はするそうだ。不思議なことに、坊さんの脳みそ
はタダらしい。」

「え〜!どうして?」

「それはね一流大学出身者の脳みそはそれまでに酷使して、疲労しているから
働きが悪いらしい。そこへゆくと茶髪の子は脳みその大部分を使っていないか
ら、新品同様で価値があるのだそうな。坊さんのはね、酒に侵されてスポンジ
状態の場合がほとんどで、テープのようにワンパターンのお経か、説教しか出
来ないから社会的に無価値なのだそうな。」

 茶髪くらい大した問題ではないと思うのは私だけではないはずである。お寺
の観音さまは、イヤリングもしていればネックレスも身に付けている。頭には
ティアラ(礼装用頭飾り)のようなものまで付けている。それはそれなりに意
味があってのことと知るが、私も深くは詮索したことがないので解らない。

 私は目が少々弱いので、まぶしい陽の光を嫌って時々サングラスを掛けるこ
とがある。坊さん頭にサングラスの私を見て、口の悪い近所の婆さん連中が、

「潭渕和尚は暴力団や、そういえば九州では組に入っていたという話や」

ということを面白おかしく言いたがる。そういう時には、

「違うわい!わしゃあ、確かに小さいころはタンポポ組の組長じゃ。色メガネ
を掛けている方が色メガネで見ているのか、掛けていない方が色メガネで見て
いるのか、どっちじゃあ!」と言ってやる。

人はすぐに顔つきや、着ているもの、身に付けているもので判断する。時々、
お寺で子供を預かることがあるが、すぐに「何処から来たの」「誰の子」「お
じいさんの名前は」等々聞きたがる。そんなことどうでもよい。その子を見れ
ばその子が解る。少なくとも道樹寺に遊ぶ子は仏さまの子である。それだけで
いいのだ。差別に生きている人は、差別心が言葉の端々からぽろぽろと出てく
る。子供を見れば無条件に自分が上位に立つ者だと勘違いしている場合が多い。
心の中に、自分では気が付かないままに「はからい」というやつが有るからだ。
お寺はその「はからい」を取り除く場所である。

 唐代の趙州(じょうしゅう)和尚は一二〇歳まで生きられたとして有名であ
るが、『趙州真際禅師語録』に、
「常自謂曰、七歳童兒勝我者、我即問伊。百歳老翁不及我者、我即教他。」
「常に自ら謂(い)いて曰く、七歳の童児も我に勝(すぐ)るる者は、我は即
(すなわ)ち伊(かれ)に問わん。百歳の老翁(ろうおう)も我に及(およ)
ばざる者は、我は即(すなわ)ち他(かれ)に教えん。」
と残っているが、なかなかこれが出来ない。しかし、相手に地位が有るから、
子供だからなどということで、人に接する心が変わってはいけない。そういう
態度は自らを貧しくするだけである。茶髪の人も、いっそのことわきの下から
すね毛まで全部染めてくれれば徹底していいのに‥‥と、この前、公衆浴場へ
行き世間話をしていて、そう思った。好い青年たちだった。

01  君看よ
02  好事
03  独座
04  皆真なり
05  共に行く
06  好日
07  不食
08  蒼龍の窟
09  家珍
10  風涼し
11  弁じ難し
12  滋味無し
13  月在手
14  無南北
15  短法身
16  這漢
17  同事
18  桃核
19  足別離
20  癡僧
21  元不識
22  不遠
23  不諾
24  也風流
25  無所住
26  阿家牽
27  忘却
28  是非人1
29  是非人2
30  竹一竿
31 斑斑色
32 可憐
33 眞人
34 無慚色
35 不相知
36 三子寒
37 似秋月
38 思鱸客
39 明月夜
40 進一歩
41 千年翠
42 喫茶去
43 殺仏
44 如在
45 声吁吁
46 山高
47 不貪
48 養形
49 夜来雁
50 世上人
51 上樓
52 無暖気
53 嫌揀擇
54 罵李
55 怪力乱神
56 童子不知
57 到遼西
58 火自涼
59 不覚臭
60 無咎
61 為父隠
62 生万物
63 至菩提
64 北枝寒
65 無功徳
66 邯鄲之歩
67 東家杓柄
68 謂之仁
69 諸行無常
70 一期一会
71 問伊
72 乾屎ケツ
73 楚地花
74 な し
75 な し


説教はイヤだ!体験がいい!坐禅を組む。

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道樹寺 江口 潭渕(たんえん) dojuzi@ktroad.ne.jp