一筆法話51

『上樓』(ろうにのぼる)


 インターネットに「道樹寺のホームページ」を掲示して以来一年になるが、さまざまな人から
便りが来るようになった。わざわざ東京からこの夏に道樹寺へ来て二、三泊していった人もいる。
岐阜のKさんは岐阜県にもこんなお寺があったのかと驚いて訪れて以来、頻繁に足を運ぶように
なった。インターネットは地球規模だからどこから便りが来るかわからない。突然ハワイから来
たり、同じ美濃市大矢田から来ることもある。そうやって知りあったシカゴのMさんもその一人
である。

 平成九年十二月の最後の便りは、
「五日間のクリスマス休暇も、何もしないうちに終わってしまいました。明日、明後日(十二月
二十九、三十)と出勤です。私は今年だけで、UA機に六十回以上搭乗したらしい。航空会社が
そう言ってきたので間違いないと思うが、この一年無事に過ごせた事に対し、合掌。合掌の使い
方、これで宜しいですか?そうそう、和尚さんと知り合った事も特筆もの。間もなく、五十の大
台に乗るというのに、いまだに何もわからない。来年も宜しくご指導のほどお願い申し上げます。
                                     シカゴ M」
であった。

 「一尺の絹(きぬ)にも練(れん)を擣(う)ち、一盃の酒にも樓(ろう)に上(のぼ)る」
という言葉があるが、一尺の絹を作るにも糸を練らねばならないし、少しの酒でも美味しく飲む
ためにはわざわざ樓に上り雰囲気を考えて飲まなければならない、ということだが、どんな小さ
なことでも全力で取り組み、手を抜かないということである。インターネットも手が抜けない。
相手の真剣さが伝わってくる便りには、こちらも本気になる。袖振り合うも他生の縁というが、
人生を豊かにするのはこの小さなご縁の積み重ね以外にほかならないと思うからである。そうい
う意味でインターネットは、葬式や法事だけを担当していると思われているお寺の世界に、不思
議な巡り合わせをもたらす活路なのかも知れない。

 Mさんに対する返事は、
「アメリカでは日本ほどに正月のばか騒ぎはないでしょう。人間は死ぬまで生きているというこ
とは事実ですが、それ以上のことは誰も解らない。解らないから笑っていられる。癌を患っても、
飛行機で落ちても死ぬまで生きていればいいことです。(宗教的には生かされていると言います
が、‥‥‥)だから、不思議な巡り合い、不思議な私の命に合掌。自分への合掌、親しい人への
合掌、犠牲になった食べ物への合掌 。しかし、合掌が鼻につかないようにさりげなくやること
も大事です。わざとらしく合掌する人がいますが、人知れず合掌することが一番尊いといいます。
これは、亡き師匠の受け売りです。師匠は別れる時、人が後ろを向いたときにそっと合掌してい
ました。では、‥‥‥合掌。                          江口潭渕」


一筆法話

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01  君看よ
02  好事
03  独座
04  皆真なり
05  共に行く
06  好日
07  不食
08  蒼龍の窟
09  家珍
10  風涼し
11  弁じ難し
12  滋味無し
13  月在手
14  無南北
15  短法身
16  這漢
17  同事
18  桃核
19  足別離
20  癡僧
21  元不識
22  不遠
23  不諾
24  也風流
25  無所住
26  阿家牽
27  忘却
28  是非人1
29  是非人2
30  竹一竿
31 斑斑色
32 可憐
33 眞人
34 無慚色
35 不相知
36 三子寒
37 似秋月
38 思鱸客
39 明月夜
40 進一歩
41 千年翠
42 喫茶去
43 殺仏
44 如在
45 声吁吁
46 山高
47 不貪
48 養形
49 夜来雁
50 世上人
51 上樓
52 無暖気
53 嫌揀擇
54 罵李
55 怪力乱神
56 童子不知
57 到遼西
58 火自涼
59 不覚臭
60 無咎
61 為父隠
62 な し
63 な し
64 な し
65 な し


説教はイヤだ!体験がいい!坐禅を組む。

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道樹寺 江口 潭渕(たんえん) dojuzi@ktroad.ne.jp