『是非人二』(ぜひのひと二)


お釈迦さまの時代のことを書いてある一番古い教典の一つ
に、「長老の詩」というのがある。そのなかに、チューラ
パンタカ長老の話が出てくる。私はこのチューラパンタカ
長老の部分を読むと、いつも胸が熱くなる。チューラパン
タカは少しばかり頭の回転が遅い人で、
「お釈迦さまの教えの言葉」もなかなか暗記することが出
来ず、修行僧たちから軽べつされていた。チューラパンタ
カの兄は賢い人であったが、弟がお寺の中で他の修行僧に
迷惑を掛けることにいたたまれなくなり、弟のチューラパ
ンタカをお寺から追い出そうとした。
「さあ、お前は家に帰りなさい。お前がここに居てはみん
なの修行が進まなくなる」
チューラパンタカは言われるままに、出ていこうとしたが、
なお諦めきれずにしょんぼりと、僧園の小屋の中に立って
いたが、自分でも自分が情けなくなり、ついに決心してお
寺を飛び出て行こうとした。その時、はからずも門のとこ
ろでばったりとお釈迦さまに出会った。
「もう、夕暮れも近いのにどこへ行くのかね」
「はい、私がここに居てはみんなに迷惑を掛けるので、出
ていこうと思います」
「チューラパンタカよ。心配するな、出ていくことはない」
お釈迦さまは、やさしくチューラパンタカの頭を撫でて、
彼の手を把りお寺の中に再び引き入れられた。そして、一
枚の雑巾を与えてこうおっしゃった、
「いつも、この清らかな布に心を集中していなさい」
それからチューラパンタカはいつも一枚の雑巾と一つにな
りお寺を磨き上げた。やがて知らずしらず彼は悟りの道へ
と導かれて尊い人となった。
私はこういう記録が仏教の教典の中に残っていることに感
謝する。お釈迦さまの人間的な温かみと心の深さを思い、
仏教徒でよかったと感謝する。恥ずかしながら、私も頭を
撫でられ、手を把ってもらいたいと願う。
ある宗教の方が当方のお寺へも時折、勧誘に来る。いつ頃
から宗教心に目覚められたか知らないが、その信念の堅さ
には感心する。
「私たちの宗教を信じれば救われますが、そうでない者は
地獄に落ちることになっています」
「そりゃあ困った。何とか救ってくれませんか」
「だめですね。毎月雑誌を買って読んでもらえれば救われ
る可能性もありますが…。」
「いや、そんなお金はないよ。仕方がないから私は地獄で、
坐禅会でも開きますよ」
「………。(馬鹿な坊さんという目つき)」
『来説是非者 更是是非人』 無門関(十八則)
『来たって是非を説とく者は 更ちこれ是非ぜひの人)
お釈迦さまは是非を論ずる方ではなかった。信仰や修行
というものは自分自身の心の中の問題であり、自分自身
の心の平安を願うものであって、他人が成り代わること
はできない。それなのに現代の信仰家や宗教家たちは、
自分の信仰や知識を自慢することに熱中し、その信仰や
知識で自分を磨こうとせずに、他人を磨こうとばかり考
えているような気がする。

一筆法話

コピーしてお読み下さい。
01  君看よ
02  好事
03  独座
04  皆真なり
05  共に行く
06  好日
07  不食
08  蒼龍の窟
09  家珍
10  風涼し
11  弁じ難し
12  滋味無し
13  月在手
14  無南北
15  短法身
16  這漢
17  同事
18  桃核
19  足別離
20  癡僧
21  元不識
22  不遠
23  不諾
24  也風流
25  無所住
26  阿家牽
27  忘却
28  是非人1
29  是非人2
30  竹一竿
31 斑斑色
32 可憐
33 眞人
34 無慚色
35 不相知
36 三子寒
37 似秋月
38 思鱸客
39 明月夜
40 進一歩
41 千年翠
42 喫茶去
43 殺仏
44 如在
45 声吁吁
46 山高
47 不貪
48 養形
49 夜来雁
50 世上人
51 上樓
52 無暖気
53 嫌揀擇
54 罵李
55 怪力乱神
56 童子不知
57 到遼西
58 火自涼
59 不覚臭
60 無咎
61 為父隠
62 な し
63 な し
64 な し
65 な し


説教はイヤだ!体験がいい!坐禅を組む。

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道樹寺 江口 潭渕(たんえん) dojuzi@ktroad.ne.jp