『短法身』(たんほっしん)


今年もいよいよ十二月になってしまった。師走ともなれば
公私ともに酒席に着くことが多くなってくる。二次会、三
次会と場所を変えて飲み歩く人もいる。そして最近はお決
まりのカラオケである。
ものごころついた時分から長年耳を思つて、小さな音は聴
き取りにくいので、割れるようなカラオケの音の中で会話
を楽しむということは至難(しなん)である。いやいや人
に連れられてカラオケのある場所へ行けば、きっと順番が
廻つてくる。一旦は断るが、しつこく歌えと逼(せま)る。
そういう時は眼を三角にして、
「知らん!歌えん!」
と凄(すご)んで見せる。そうすれば楽しくないやつだと
云う顔をされる。
生来の無口で恥ずかしがりやで音痴ときている。よくぞま
あ、お坊さんに成れたものだ、と自分でも不思議に思って
いる。しかし以前は、偉いお坊さんは人前に出てぺらぺら
と喋らないものだと思つていた。そしてそういう人に成り
たいと思つていた。しかし偉くなれない今となっては、た
だ「苦労」である。
ある人がいて、小さい時から歌うのが苦手で人前では決し
て歌うまいと心に決めていた。そう言う人に限つて歌わさ
れることに直面する。会社の接待の席でどうしても歌わな
けれぱならなくなった。意を決して、岡 晴夫の「あこが
れのハワイ航路」というのを歌つたら、ヤンヤの喝采(か
っさい)であった。あまりに音がはずれてウケたのである。
それから同じ歌ばかりを歌うようになったら、だんだん拍
手がこなくなった。上手になってきたのである。これはい
けないと思い、違う曲を歌つたら本性にたがわず、またみ
んなが喜んだ。それ以来、彼は彼なりにカラオケの楽しみ
方を会得した。
『長者長法身、短者短法身』
ちょうじゃはちょうほっしん たんじゃはたんほっしん、
と読む。
むかし観た映画に『道』というのがあって、その中でジエ
ルソミーナという女の子が、
「路傍(ろぼう)の石だって無意味に転がっているのじや
ない、そこに在るべくして在るんだわ」
という内容のことをいっていた。ほんとうにそうである。
背の高い人は高いなりに完全無欠であり背が低い人は低い
なりに完全無欠である。十把一からげに右へ倣(なら)い
することはない。カラオケでも、下手は下手のように苦労
をしている。又、上手な人は上手な人で別の苦労をしてい
る。世の中すべての人間が、同じ方向へ向かって歩いて行
くだけが道ではない。皆さん自信をもって歩いて下さい。

一筆法話

コピーしてお読み下さい。
01  君看よ
02  好事
03  独座
04  皆真なり
05  共に行く
06  好日
07  不食
08  蒼龍の窟
09  家珍
10  風涼し
11  弁じ難し
12  滋味無し
13  月在手
14  無南北
15  短法身
16  這漢
17  同事
18  桃核
19  足別離
20  癡僧
21  元不識
22  不遠
23  不諾
24  也風流
25  無所住
26  阿家牽
27  忘却
28  是非人1
29  是非人2
30  竹一竿
31 斑斑色
32 可憐
33 眞人
34 無慚色
35 不相知
36 三子寒
37 似秋月
38 思鱸客
39 明月夜
40 進一歩
41 千年翠
42 喫茶去
43 殺仏
44 如在
45 声吁吁
46 山高
47 不貪
48 養形
49 夜来雁
50 世上人
51 上樓
52 無暖気
53 嫌揀擇
54 罵李
55 怪力乱神
56 童子不知
57 到遼西
58 火自涼
59 不覚臭
60 無咎
61 為父隠
62 な し
63 な し
64 な し
65 な し


説教はイヤだ!体験がいい!坐禅を組む。

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道樹寺 江口 潭渕(たんえん) dojuzi@ktroad.ne.jp