『 家 珍 』


『從 門 入 者 不 是 家 珍』
(門より入る者は、是れ家珍にあらず)
という言葉がある。これは頭で覚えたものや人から聞いた
ものは自分の宝ではないという意味である。つまり、外か
ら詰め込んだものではなく、自分自身の内側からわき出て
くるものが本物だということである。雪に触れなくても人
は、
『雪は冷たい。』
と云う。しかし、実際に雪の中を素足で托鉢して歩いた者
にとって「雪は冷たい」と云 う常識だけにとどまらない。
『雪は冷たい、雪は痛い、雪は暖かい。』と、自分自身の
心の底から云える。
禅の道場に掛搭(入門)するには、大玄関で二日間の庭詰
(にわづめ)という土下座嘆願の行から始まる。その態度
が悪ければ、二日が三日にもなり一週間にもなる。
庭詰(にわづめ)といえども、玄関先でご飯も出してくれ
るし、夕方になれば上げて泊めてくれる。
『そろそろ足もとも暗くなります故、投宿をお許し致しま
すので、わらじを脱いでお上がり下さい。』
と、云って一室へ案内される。一日中、平蜘蛛のようには
いつくばっていたので腰や背中が痛む。一室に案内された
からといって、やれやれと大の字になって横になることは
でき ない。そんな所を見られたら半殺しの目にあって門
の外に放り出されておしまいである。
消灯の時間までは壁に向かってひたすら、恐る恐る坐禅を
組むのである。庭詰(にわづめ)が済めば今度は三日から
五日間の旦過詰(たんがづめ)が待っている。
それは朝から晩まで終日、六畳くらいの薄暗い部屋に閉じ
込められて坐禅三昧の修行である。少々足が痛くても、ど
この障子の穴から見られているやもわからないのと、誰一
人知った者のいない心細さと、不安からまんじりともでき
ない。
これが禅宗のお坊さんに成るための入門テストである。禅
の修行は徹底して「体験」させることを目的としている。
だからこそ、入門の時に 過酷な庭詰(にわづめ)や旦過詰
(たんがづめ)の体験を強制して、これからの修行に対す
る熱意と決意を促す。その 求道心を見定めておいて、四季
を通じて雲水一人一人の自発的な内なる『家珍』の発見を
待つために、ぐうの音も出ないほどにしぼられる。

一筆法話

コピーしてお読み下さい。
01  君看よ
02  好事
03  独座
04  皆真なり
05  共に行く
06  好日
07  不食
08  蒼龍の窟
09  家珍
10  風涼し
11  弁じ難し
12  滋味無し
13  月在手
14  無南北
15  短法身
16  這漢
17  同事
18  桃核
19  足別離
20  癡僧
21  元不識
22  不遠
23  不諾
24  也風流
25  無所住
26  阿家牽
27  忘却
28  是非人1
29  是非人2
30  竹一竿
31 斑斑色
32 可憐
33 眞人
34 無慚色
35 不相知
36 三子寒
37 似秋月
38 思鱸客
39 明月夜
40 進一歩
41 千年翠
42 喫茶去
43 殺仏
44 如在
45 声吁吁
46 山高
47 不貪
48 養形
49 夜来雁
50 世上人
51 上樓
52 無暖気
53 嫌揀擇
54 罵李
55 怪力乱神
56 童子不知
57 到遼西
58 火自涼
59 不覚臭
60 無咎
61 為父隠
62 な し
63 な し
64 な し
65 な し


説教はイヤだ!体験がいい!坐禅を組む。

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道樹寺 江口 潭渕(たんえん) dojuzi@ktroad.ne.jp