『 君 看 よ 』


私が中学三年生の時だった。クラスは別々だったが、一番仲の良い友人がい
た。彼と私は剣道をやっていて、いつも一緒に練習をして、帰りも一緒に帰
り、時々はお互いに泊まりに行ったりもしていた。

その彼のお母さんが病気になり、三か月ほど入院して亡くなってしまった。
彼は剣道部をやめて、授業が終われば直に家に帰るようになった。私はその
まま剣道を続け、彼とは なるべく会わないようにした。

ある日、バスの停留所で彼とばったりと出会った。
「お前、最近少しも声を掛けてくれないじゃないか…。元気にしとるのか。」
と彼が話しかけてきた。私は、
「お前となんか会いたくない…。」
といって、つい涙がぽろぽろと溢れてしまった。

十五、六才の未熟な私には、友人を慰めるだけの言葉を持ち合わせていなか
ったので、彼に会わない事が、私のせめてもの友情の気持ちだったのだ。
彼も私の涙を見て、ぽろぽろと涙をこぼした。あれから二十五年経ち、さま
ざまな哀しい場面に遭遇してきたが、やはり言葉が出てこない。何か慰めの
言葉を捜しても、そこには空々しい気持ちが残るだけだ。人は本当に哀しい
時には、眼で語るしかない。

良寛さんが最も愛した言葉に、

『君看双眼色、不語似無愁』
(きみみよそうがんのいろ、かたらざればうれいなきににたり)

というのがある。これは言葉を費やして、おれは苦労した、悲しい想いだ、
などと云うよりも全ては二つの眼の中に含まれている。口に出すだけ野暮と
いうものだ。黙っていても人生の喜びや楽しみ、悲しみや苦しみ、そして哀
しい想いを した人は、その眼が全てを語っている、という意味ではないだろ
うか。

一筆法話

コピーしてお読み下さい。
01  君看よ
02  好事
03  独座
04  皆真なり
05  共に行く
06  好日
07  不食
08  蒼龍の窟
09  家珍
10  風涼し
11  弁じ難し
12  滋味無し
13  月在手
14  無南北
15  短法身
16  這漢
17  同事
18  桃核
19  足別離
20  癡僧
21  元不識
22  不遠
23  不諾
24  也風流
25  無所住
26  阿家牽
27  忘却
28  是非人1
29  是非人2
30  竹一竿
31 斑斑色
32 可憐
33 眞人
34 無慚色
35 不相知
36 三子寒
37 似秋月
38 思鱸客
39 明月夜
40 進一歩
41 千年翠
42 喫茶去
43 殺仏
44 如在
45 声吁吁
46 山高
47 不貪
48 養形
49 夜来雁
50 世上人
51 上樓
52 無暖気
53 嫌揀擇
54 罵李
55 怪力乱神
56 童子不知
57 到遼西
58 火自涼
59 不覚臭
60 無咎
61 為父隠
62 生万物
63 至菩提
64 北枝寒
65 な し


説教はイヤだ!体験がいい!坐禅を組む。

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道樹寺 江口 潭渕(たんえん) dojuzi@ktroad.ne.jp